2012年3月ボーカロイド騒動についての考察

注意: この記事は 2012 年 3 月 13 日、未だ不透明な状況で書いています。騒動の全貌を説明するものではありませんし、それが可能な状況でもありません。またこの記事を書いている PHO は今回のゲームにおけるいずれのプレイヤーとも個人的な繋がりを持っていないため、記事の情報源はすべて外部から入手したものである事をお断りしておきます。

前提

ボーカロイド・ムーブメントはそもそもの最初から音楽業界の支配下から外れた所で発展し、今日に至ってもその支配から基本的に免れたままでありながらも、過去二回(?)のライブの成功、カラオケランキング上位のキープ、商業アルバムの一般流通等に至った事で、音楽業界としてはその存在を無視する事が難しい状況となった。そこで AVE 社 は DEN 社および DWA 社の協力を得て、CFM 社に対しては凡そ蚊帳の外に置いた形で(少なくともその手始めとしては)コラボレーションアルバムを製作する事となった。またこの企画はアルバム一枚で終わるものではないものと見られる。

可能なシナリオ

一時的共存

AVE 社が関連作品を粗製濫造する一方で、DEN 社はマスメディアを利用しそれを強力にプッシュする。これにより作られたブームは一過性のものとなり、ブームが沈静化すると状況は単に元通りとなる。

DEN 社の損益

この企画から短期的に少なくない広告料が見込めるものの、メリットはそれだけである。しかしデメリットは無く、そもそも同社は他に無数の商材を持っている。

AVE 社の損益

ブーム継続中に得られる短期的な利益は大きなものとなるであろうし、そしてデメリットは特に存在しない。しかし得られる利益はあくまでも短期的なものに限られ、それは後述するようなムーブメント破壊から得られる利益に比べれば小さいものであると言える。

DWA 社の損益

ほぼ確定事項と考えて良いシナリオ前半においては、AVE 社もしくは DEN 社からの少なくない仲介料が得られるものと思われる。仮に後述するようなムーブメント衰退が発生すれば DWA 社の損失となるが、後述の理由により DWA 社は選択肢を持っていない可能性がある。

CFM 社の損益

ブーム継続中には版権使用料の形で少なくない利益が得られるものの、後述のリスクが存在する。

間接的破壊

AVE 社が関連作品を粗製濫造する一方で、DEN 社はマスメディアを利用しそれを強力にプッシュする。これにより作られたブームは一過性のものとなるが、ブームが沈静化すると共に元のムーブメントも衰退する事になるかも知れない。ムーブメント衰退については不確定事項である事に注意して欲しい。

DEN 社の損益

シナリオ後半部分すなわちブーム沈静化後のムーブメントの衰退が起これば DEN 社は自らが関わる事のできない金の流れの阻止に成功した事になり、同社にとって幾らか都合の良い状況にはなるものの、この企画から得られる短期的な広告料の他には特に利益が見込めるわけではない。然程大きなメリットがあるわけではないが、デメリットは一つも無い。同社は他にも無数の商材を持っているからだ。

AVE 社の損益

シナリオ後半が成立すれば、これは後述の通り AVE 社には大きなメリットとなる。また仮にその事が起こらなかったとしても企画から短期的に大きな利益が得られ、そしてデメリットは特に存在しない。

DWA 社の損益

ほぼ確定事項と考えて良いシナリオ前半においては AVE 社もしくは DEN 社からの少なくない仲介料が得られるものと思われるが、仮にシナリオ後半が現実となれば、後述の理由により DWA 社は損失を被る。次に述べる CFM 社ほどではないにせよ、DWA 社の損益もまた不確定事項に左右され得る。しかしながら同社の筆頭株主が AVE 社である事実を踏まえると、DWA 社にはこれを拒否できない理由が存在すると考えられる。

CFM 社の損益

シナリオ前半部分すなわち AVE 社および DEN 社主導でのブーム継続中には、版権使用料の形で少なくない利益が得られる。一方シナリオ後半が現実となった場合、これは明らかに CFM 社には大きな損失となる。つまり同社の損益は不確定事項に大きく左右されるのであり、実際同社は今回の企画に対する態度を未だ固めていない様子が見受けられる。

直接的破壊

AVE 社、DEN 社もしくはその関連企業が CFM 社から全ての権利を買収。ソフトウェアの販売を終了すると同時に利用規約を改正し、AVE 社を始めとする大手レコード会社を通さない形での一切の楽曲の新規発表を禁止する。これによりアマチュアミュージシャンその他は今後ボーカロイド作品を発表する事が事実上不可能となり、前提に述べたムーブメントは必然的に壊滅する。このような規約改正が法的に有効なものであるかどうかは判らないが、たとえ実際には無効であったとしても訴訟をちらつかせて脅しを掛ける事は常に可能である。いわゆるスラップ訴訟だ。

DEN 社の損益

自らが関わる事のできない金の流れを阻止する事ができるため、DEN 社にとって幾らかは都合の良い状況にはなるものの、この企画から得られる短期的な広告料の他には特に利益が見込めるわけでもない。然程大きなメリットがあるわけではないが、しかしデメリットは一つも無い。同社は他にも無数の商材を持っているからだ。

AVE 社の損益

アマチュアを中心としたムーブメントの発生は AVE 社のような大手レコード会社の活動と明らかに競合するものである以上、彼らにとっては商売上の障害以外の何物でもないため、ムーブメントの壊滅には大きなメリットがあり、そしてデメリットは何一つ存在しない。またこの企画によって引き起こされるブームが短期間のうちに消滅しても、AVE 社は少なくとも短期的には大きな利益を上げる事ができる。

DWA 社の損益

企画の継続期間中には AVE 社もしくは DEN 社からの少なくない仲介料が得られるものと思われるが、そもそもこのムーブメントの事実上の舞台を所有しているのが DWA 社である以上、中長期的には損失となるものと思われる。また同社の舞台はボーカロイドの為だけに存在するものではないから、確実に受ける事となるマイナスイメージの波及範囲はボーカロイドの枠を容易に越え得る。従ってこれは DWA 社にとってあまり良い話ではない。ただし同社の筆頭株主が AVE 社である事実を踏まえると、DWA 社にはこれを拒絶できない理由が存在するものと考えられる。

CFM 社の損益

権利の売却により一時的に利益は得られるものの、その反面で上述の規約改正が行われれば CFM 社のブランドイメージは地に落ちる事となり、同社の DTM 関連事業の存続そのものが危うくなる可能性も考えられる。明らかにこれは良い話ではない。またそもそもこのシナリオは CFM 社が首肯しない限り成立しないものであるから、本記事に挙げた中では最も可能性の薄いシナリオであると考えられる。

総評

少なくとも現時点でこのゲームにおけるプレイヤーは DEN 社、AVE 社、DWA 社、CFM 社の四社であるものと見られる。そのうち DEN 社はいずれの状況においてもそれなりの利益が得られ、一方リスクは持たない。AVE 社の得る事になる利益は状況により大きく変動するが、いずれにせよリスクを一切抱えていないプレイヤーである。DWA 社の損益は状況によりプラスにもマイナスにもなり得るが、同社は自らのプレイについて自由度が少なく、AVE 社の意向に左右され得る。そして CFM 社の損益は然程大きくないであろうプラスから多大なマイナスの間を揺れ動く事になり、ゲームの最終的な主導権を握ってはいるものの、明らかに不利な立場にあるプレイヤーである。私が CFM 社ならばこのボードに大きなチップは出せない。